エンドメトリオーシスの症状
エンドメトリオーシスは、周りの組織を刺激していろいろな症状を起こす慢性炎症性疾患であると言われています。中でも、(1)月経中の痛み(月経困難症)、(2)月経時以外の腰下腹痛(慢性痛)、(3)不妊症が3大症状といわれ、多くの女性のQOLを低下させています(表1)。
月経困難症(月経中の痛みなど) | 慢性痛(月経時以外の痛み) | 不妊 |
---|---|---|
|
|
|
1.月経困難症
エンドメトリオーシスの患者さんのほぼ50%に月経困難症がみられます。中でも、腰・下腹痛が多く、月経が始まると下腹または腰に差し込むような痛みを覚え、数日間続きます。月経の回を重ねるごとに痛みは強くなっていきます。痛みの強さと病変の進行の程度とは必ずしも一致せず、どこの病変が痛みを起こしやすいのかまだよく分かっていません。そのほか排便、排尿痛や血便、血尿が起こることもありますが、これは病気が直腸や膀胱に広がっているためです。まれに肺などにも病気ができることがあり、その場合は気胸や喀血を起こします。またこのような身体の症状だけでなく、気分的が落ち込んだり、思考力や集中力が低下したり、うつ状態になったりするなど、エンドメトリオーシスは多くの患者さんのQOLを低下させています。
2.慢性痛
エンドメトリオーシスが進行していくと、月経時以外にも痛み(腰・下腹痛、排便痛、性交痛など)を起こすことがあります。これは主に病巣が子宮の後ろ側にある直腸との間の空間(ダグラス窩)や直腸と腟の間(直腸腟中隔)に広がり、これが刺激されるためです。したがって、慢性的な痛みがある場合は、エンドメトリオーシスがかなり進んだ状態の可能性があります。これらも患者さんのQOLを非常に低下させます。
3.不妊症
不妊症の女性の30%以上にエンドメトリオーシスがみられ、エンドメトリオーシスの患者さんの30-60%は不妊症だといわれています。
エンドメトリオーシスの患者さんでは、癒着のために卵管障害(卵が卵管を通って子宮に行かれない)を起こし、不妊症となります。それだけでなく、エンドメトリオーシスからの炎症物質が、卵子・精子・受精卵・子宮内膜などに悪影響を与えて、卵管障害だけでなく、排卵障害(良い卵子ができない)、着床障害(卵子が子宮にくっつかない)もおきて、妊娠を妨げていると考えられています。