理事長ご挨拶

理事長
群馬大学大学院医学系研究科
産科婦人科学講座教授
岩瀬 明

この度、原田 省理事長の後任を拝命いたしました。伝統ある日本エンドメトリオーシス学会の運営という重責を担うにあたり身の引き締まる思いです。

子宮内膜症は、婦人科疾患の代表的コモンディジーズのひとつであり、多くの産婦人科医がそのキャリアの中で最初期に出会う疾患です。一方、本疾患の病態は複雑かつ患者さまの訴え、悩みも様々であり、子宮内膜症診療に精通するには、産婦人科医のキャリアを10年、20年と積み重ねる必要があります。従来の疼痛、不妊症、卵巣子宮内膜症性嚢胞のがん化の問題に加え、近年では、メンタルヘルス、周産期合併症、心血管疾患など子宮内膜症女性の健康リスクの議論は拡大しており、我々は常にこれらの新しい課題への挑戦をしいられています。

このような背景のもと、子宮内膜症診療に携わる医療関係者のみならず、本領域の研究者が日本エンドメトリオーシス学会に集い、議論の場として本会は発展してまいりました。100年以上に及ぶ子宮内膜症に対する臨床・基礎研究の成果は、腹腔鏡による低侵襲手術、種々のホルモン療法の発展として還元されています。一方で、子宮内膜症の病因病態は完全には解明されておらず、さらなる研究と新しい治療法の開発が望まれており、本会の果たすべき役割は、より一層重要になっています。さらには子宮内膜症と併存することの多い子宮腺筋症、子宮筋腫についても子宮内膜症同様の女性ホルモン依存性婦人科疾患として本会で議論されることで相乗効果が得られると認識しています。

世界的には子宮内膜症にフォーカスした学会、World endometriosis society、The society of endometriosis and uterine disorders、Asian society of endometriosis and adenomyosisなどがあり、特に若いドクター・研究者の方々の本会での活動が、世界的に研究成果を発信するための足掛かりとなるよう、国際学会との交流も深めていきたいと考えています。

浅学菲才の身ですが、日本の子宮内膜症研究の伝統を継承された先人の努力と偉業を受け継ぎ、本会の発展に少しでも貢献できますよう努力する所存です。皆様のご指導とご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。