エンドメトリオーシスの治療の方法

エンドメトリオーシスに治療が必要となるのは、主に痛みが強い場合と不妊症の場合ですが、卵巣チョコレートのう胞がある場合は、症状がなくても、破裂や感染を予防するために治療を勧められることもあります。

治療の原則は病変をできるだけ取り除く、あるいは消失させることによって症状の改善をはかることにあります。大きく分けると薬物療法と手術療法があり、両者を組み合わせることもあります(表2)。

表2.エンドメトリオーシスの治療法
手術療法 薬物療法 不妊治療
  • 保存手術
  • 根治手術
  • 対象療法
    鎮痛薬、漢方薬など
  • ホルモン療法
    低用量エストロプロゲスチン
    黄体ホルモン
    GnRHアナログ など
  • タイミング療法
  • 腹腔鏡下手術
    病巣除去
    癒着剥離
    卵管通水
    腹腔内洗浄 など
  • 生殖補助医療
    体外受精
    顕微授精
    凍結胚移植 など

手術療法

病変を目で見て直接観察でき、病巣を取り除くことができることから最も有効であると考えられます。従来は開腹手術が行われていましたが、最近では多くの施設で腹腔鏡下手術が行なわれています。おなかに5ミリ程度の穴を3-4ヶ所開けて、カメラと手術器械をおなかのなか入れ、モニターに映し出された像を見ながら手術を行います。

保存手術では、病巣だけを取り除いて子宮や卵巣を温存します。月経痛の強い場合には癒着を開放したり、卵巣チョコレート嚢胞に対しては、正常卵巣を残して嚢胞壁を取り除いたり焼灼したりします。根治手術に比べて再発の危険性があるので、術後も薬物療法をするなどして再発に注意する必要があります。

一方、根治手術では、病巣を含めて子宮や卵巣を全部摘出します。妊娠の希望がなく、痛みから解放されたい方などに行われます。高度な技術が必要ですが、最近ではこの場合も腹腔鏡下手術で行われることが増えてきました。

薬物療法

鎮痛剤や漢方薬などで症状を和らげる対症療法と、病巣の発育を止めるためのホルモン療法があります。 ホルモン療法には低用量エストロプロゲスチン、黄体ホルモン、GnRHアナログなどがあります(表3)。

表3.エンドメトリオーシスに対する各種ホルモン療法の特徴
ホルモン療法 作用 副作用 投与期間
低用量エストロゲンプロゲスチン 排卵抑制 血栓
消化器症状
肝機能障害など
長期投与可能
黄体ホルモン 排卵
子宮内膜症増殖抑制
不正出血など 長期投与可能
GnRHアナログ 排卵抑制
エストロゲン抑制
更年期症状
骨量減少
連続6ヵ月以内

不妊治療

不妊症でお困りのエンドメトリオーシスの患者さんには、様々な因子を考慮ながら治療を進めていきます。上述のホルモン療法のほとんどは排卵を止める作用があるため、妊娠を希望される期間は用いることができません。そのため不妊症の患者さんには、ホルモン療法はせずに、不妊症に対する治療を行います。

待機療法(タイミング療法など)

年齢が若く、不妊期間の短い患者さんには、まず、タイミング療法を行います。

腹腔鏡下手術

病巣を摘出・焼灼し、癒着を剥離し、さらに腹腔内や卵管内の洗浄をすることなどにより、腹腔内の環境を改善し、妊娠しやすくさせます。

生殖補助医療

年齢の高い患者さんや、不妊期間が長い場合、男性側に乏精子症などの因子がある場合、あるいは腹腔鏡下手術後も妊娠しない場合は、体外受精などの生殖補助医療を行ったほうが良いことがあります。