エンドメトリオーシスに治療が必要となるのは主に痛み(月経痛、骨盤痛、性交痛、排便痛など)が強い時と不妊の場合です。卵巣チョコレートのう胞がある場合は、無症状であっても治療が勧められる時もあります。患者さんによって痛みだけとって欲しい方、妊娠したい方、痛みも和らげ妊娠もしたい方などさまざまです。治療の原則は病変をできるだけ取り除く、あるいは消失させることによって症状の改善を図ることにあります。大きく分けると薬物療法手術療法があり、場合により両者を組み合わせることもあります。  (右表参照:表をクリックすると拡大します)

Q 薬物療法とは?
鎮痛剤などで痛みを和らげる対症療法と病巣の発育を止めるためのホルモン療法があります。 ホルモン療法には偽閉経療法、偽妊娠療法、黄体ホルモン療法などがあります。  (右表参照:表をクリックすると拡大します)

Q 偽閉経療法とは?
ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬(GnRHa)により、エストロゲンを低下させ閉経期と同じようなホルモン状態にすることでエンドメトリオーシスの進行を抑える治療法です。約8割の患者さんに月経痛をはじめとする痛み症状の改善がみられます。副作用としてほてり、のぼせ、発汗、肩こりなどの更年期症状がでることがあります。またエストロゲンが低い状態が長期間続くと、骨量低下をおこす可能性がでてきますので一般的に治療期間は約半年とされています。(右表参照:表をクリックすると拡大します)


Q 偽妊娠療法とは?

エンドメトリオーシスでは毎月の月経がその症状を悪くする原因のひとつとなっているので、人工的に妊娠している状態をつくり月経をとめる方法です。ピル(エストロゲンとプロゲステロンの混合剤)を服用すると、排卵および子宮内膜の増殖が抑えられるため月経痛が軽減されます。偽閉経療法のように骨量低下をおこしたりしないので長期間の使用が可能ですが、血液凝固や肝機能障害などの副作用がでることがあります。副作用の少ない低用量ピルは保険の適応がありませんでしたが、ルナベルやヤーズという薬がエンドメトリオーシスの月経痛に対して使用できるようになりました。

Q 黄体ホルモン療法とは?
ディナゲストやデュファストンには、エンドメトリオーシス病巣に直接働きかける作用があります。長期に服用することができ、血液凝固異常なども少なく安全性が高いことが示されました。主な副作用としては不正出血が起こることが多いですが、長期にわたって服用することにより不正出血は減少します。

Q 手術療法とは?
病変を目で見て直接観察でき、病巣を取り除くことができることから最も有効であると考えられます。以前は開腹して行わねばなりませんでしたが、多くの施設で腹腔鏡手術が行なわれています。お腹に3-4ヶ所孔を開けて、カメラと手術器械を入れ、腹腔内を明るく照らして、テレビ画面に映し出された拡大像を見ながら手術を行います。高度な技術が要りますが、これまでの開腹手術以上の多くの利点をもっています。手術療法には保存手術根治手術があります。

Q 保存手術とは
病巣だけを取り除いて子宮や卵巣を温存します。月経痛の強い場合にはダグラス窩(子宮と直腸の間の空間)の癒着(参考写真1を開放したり、卵巣チョコレート嚢胞(参考写真2に対しては、正常卵巣を残してのう胞壁を取り除いたり焼灼したりします。不妊の方では病巣(参考写真3(参考写真4を焼灼したり腹腔内を洗浄したりすることで妊娠しやすい状態になることを期待します。

Q 根治手術とは?
病巣を含めて子宮や卵巣を全部摘出します。妊娠の希望がなく、とにかく痛みから解放されたい方などに行われます。高度な技術が必要ですが、すべて腹腔鏡下で行われるようになってきています。


Q 腹腔鏡手術の利点は?

開腹手術にくらべて、手術創が小さい、術後の痛みが少ない、入院期間が短くてすみ、仕事や日常生活への復帰が早い、術後の癒着が少なく腸閉塞にはなりにくいということがあります。また腹腔鏡カメラは病巣に接近し、拡大してみることができるため細部まで腹腔内の観察が可能となります。(右表参照:表をクリックすると拡大します)

Q 治療の問題点は?
薬物および手術療法も有効性は認められていますが、いちばんの問題は病変あるいは症状の再発です。薬物療法後に痛みが再発するまでの期間は、GnRH作動薬で5.2ヵ月といわれています。一方腹腔鏡での病巣焼灼術の症状再発までの期間は19.2ヵ月と報告されています。

Q 妊娠しやすくなる治療法は?
エンドメトリオーシスがありながら妊娠することもよくあることですから、まだ若く、不妊期間の短い患者さんには半年-1年間くらいエンドメトリオーシスに対する治療をせずに様子をみます。これで30%ほどの方が妊娠します。様子をみて妊娠しない場合は腹腔鏡手術にて病巣を焼灼し癒着を剥離することにより、妊娠しやすくなることが示されています。手術後に自然妊娠しない場合は生殖補助操作(ART)が勧められます。

Q 生殖補助操作(ART)とは?
いろいろな治療をしても妊娠しない時(とくに卵管、卵巣の病変)、不妊期間が長い時、高年の患者さん、男性側に不妊原因がある時(乏精子症など)などには自然の妊娠は待たないで、体外受精などの補助操作に変更したほうがよいことがあります。エンドメトリオーシスの患者さんでの体外受精の成功率は他の場合の成功率とほとんど変わりなく、20%前後が妊娠します。

薬物療法も手術療法もエンドメトリオーシスを完全に治してしまうのは難しいのが現状です。少しでも治療効果を上げるためにこの両方を組み合わせて治療することが試みられていますが、長い期間がかかることを覚悟しておかねばなりません。このことをよく理解し、医師からご自分の病気の特徴、診断、検査や治療の方法、手順について詳しい説明を受け、十分納得したうえで診療を受けることが大切です(インフォームドコンセント)。エンドメトリオーシスは各個人によってさまざまな病状があり、診断や治療法もいろいろな方法があります。そのため治療をうける側も、どの方法が一番あなたに適しているかを決めるために治療に何を望んでいるのかというのをはっきりさせることが重要になります。限られた診療時間内にあなたの悩みをすべて訴えることは難しいことです。日頃、エンドメトリオーシスについてよく勉強し、疑問点をよく整理して医師と相談しましょう。信頼できる医師を選び、まわりのひとの励ましと協力をえながら、希望をもって焦らずに根気よく治療を受けてください。