代表理事からのご挨拶

石井記念愛染園附属 愛染橋病院院長
鳥取大学名誉教授   寺川直樹

寺川教授

 会員の皆様にはご健勝にて診療・研究にご活躍のことと存じます。

 第38回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会“-子宮内膜症のlife-long managementを考える-”は本年1月21日-22日の期間、日本医科大学 竹下俊行会長、明樂重夫実行委員長の素晴らしいプログラムのもと東京コンベンションホールで盛会裡に開催されました。 今回も、わが国におけるエンドメトリオーシス研究の着実な進歩を実感した学術講演会でございました。

 2009年に本会は日本エンドメトリオーシス学会(Japan Society of Endometriosis)へと名称変更しましたが、 翌年に京都市で小西郁生会長のもと開催された第31回学術講演会より応募演題数ならびに参加者は大幅に増加し、 今回の第38回学術講演会も参加者は541名、応募演題数は105題で、過去最多の参加者となりました。 近年、子宮内膜症の重要性が認識されてきたとは言え、会員数は694名で、会期は2日の学術講演会に全国からこれだけの医師や研究者らが集い、活発な討議が行われる本会はある意味で特異な学会と申せましょう。 本症に対する腹腔鏡下手術の普及に加えて、2008年に新規治療薬ディナゲストおよびルナベルが15年ぶりに登場したことも本会の発展の要因となっています。

 第32・33回学術講演会においては、指定発言-比較的稀な臓器に発生する子宮内膜症(Less common endometriosis)の呼称に関する提案-をプログラムに組んで頂きました。 消化器系、泌尿生殖器系や呼吸器系など、性器および骨盤外に発生する子宮内膜症を総括する名称は規定されておらず、 したがって様々な名称が使用され、なかでも「異所性子宮内膜症」が多く用いられています。 しかしながら、異所性子宮内膜である本症がさらに異所性に存在すると呼称するのは奇異なことです。 そのようなことから、二年間にわたる討議の結果、本会としては「稀少部位子宮内膜症」という用語を採用することに決定致しました。 日産婦学会 教育・用語委員会も近々この用語を採用する予定です。

 本会は、1980年に初代代表世話人の故 杉本 修教授(大阪医科大学)によって開催されました第1回ダナゾール研究会にその端を発します。 その後、本会はエンドメトリオーシス研究会に改称され、年1回の学術講演会開催を休むことなく続けてきました。 また、代表世話人は故 水口弘司教授(横浜市立大学)そして武谷雄二教授(東京大学)に引き継がれ、発展して参りました。 その道のりは必ずしも平坦ではありませんでしたが、世話人および会員諸兄のご努力によって本会の運営は安定したものとなり、 子宮内膜症の基礎ならびに臨床研究は向上し、国際的レベルに到達するようになりました。

 

 私が研究代表者を務める「本邦における子宮内膜症の癌化の頻度と予防に関する疫学研究(JEMS)」が現在、進行中です。本研究は日本産科婦人科学会の班研究として行われており、全国で4,200例の卵巣チョコレート嚢胞患者を集積し、その予後について10年間の前方視的追跡調査を行うものです。主たる研究目的は、(1)卵巣チョコレート嚢胞の正確な癌化率を算出する(2)患者背景の解析からリスク要因を抽出する(3)嚢胞摘出術による癌発生の予防効果を探索することです。ただ、本研究が開始して7年が経過しましたが、集積症例は2,800例に留まっております。JEMS委員会では今年度を症例登録の最期の年度と予定しておりますことから、是非とも多数の新規登録をお願い致します。10年後には、本邦から世界初のエビデンス創出の発信が期待されています。

 微力ではございますが、これからも日本エンドメトリオーシス学会のさらなる発展のために努力して参りますので、 会員の皆様にはご支援下さいますようお願い申し上げます。

(2017年1月)